かぐわしい闇 (ラバヒルです)
 


ふっと意識が呼び覚まされて。
何かしらの違和感があるような…と思うと同時、

  ―― ああ、なぁんだ、と

納得が えっちらおっちらと、
わずかほど遅れてやって来る
そんな夜更けがたまにある。



       ◇◇◇


秋のトーナメントを終えれば、
高校時代のクリスマス・ボウルにあたるそれ、
大学生には“甲子園ボウル”というのがあって。
1部2部3部とランク分けされたリーグのうち、
トップリーグでのナンバーワンとして
勝ち残った東西の雄がぶつかる頂上決戦。
そこでの勝者が
社会人の日本一チームとあたるのが“ライスボウル”で、
新年明けるとすぐにもというスケジュールで催される。
正月といやの“箱根マラソン”と日程がかぶる年も多々あるが、
そんな年でも東京ドームが満員になるのだから、
かつてはともあれ、今や大した知名度と言えようて。
そんなこんなが立て続き、日頃以上にお互いが忙しくなるこの頃合い。
アメフト的に言や、忙しいほど結構なことだっていうのにね。
相手のことなぞ忘れているほどに、日々充実しているはずが、
何かの拍子に ふと…何で此処に居ないんだろうとか、
延ばした手の先に居ないのが、勝手ながら 無性に歯痒いときもあり。

 “……。”

都会の夜は、どこかに何らかの光源があるせいか、
真の暗闇に沈むことはなく。
明かりもサブライトも何にも点けちゃあいないはずでも、
家具の輪郭が伺えたり、
携帯の充電器やPCをつないでるTA機器の位置だの、
透かし見ることが出来たりし。
そんなこんなのお陰様、
こんな目覚めようをしても、
何処に居るのかは すぐに知れるのだけれども。

  それとは別口の、違和感の正体

やさしい温味とそれから、
甘い甘い、まろやかな匂いとが。
自分の居場所の、在り処だけじゃあなく。
やっとのこと呼び寄せることの叶った存在が、
此処に、すぐ間近にいるのだと。
その甘やかな温みと香で、
見るより訊くより早く、知らせる悟らせる。

 “男、なのになぁ。”

相変わらずに上背もあるし、
それへと見合うだけの大きな手をしてもいる。
肩幅もあるし、懐ろも深い。
そこへと加えて、余裕が出て来たか、
表情に深みが増してのこと、
ますますのこと、頼もしさも増したと評判の。
女性に人気のある“イケメン”だっていうのにな。
男なら、柑橘系のシトラスか、
ぎりぎり譲って、ムスク系の甘さが限度だろうにね。
ワイルドローズとアプリコットを思わすような、
華やかで甘い匂いが、髪からも胸元からも立つ君で。
その名からも印象も、
まずは花や果実が浮かぶよな、そうまで甘いものだのに。
まとえと言われても、
そうそう納得行かぬだろう種の香りだのに。

  どうしてだろうか

この彼の持ち物だというと、
悪態をつくより先に、
ふうわりとくるみ込んでくれていることへの、
限りない安堵が先に立つ。

 “さくらバカカのクセによ…。”

桜庭という名前を呼ぶのさえ、
その甘やかな響きに照れ臭くなるよな ひねくれ者。
小学生レベルの天の邪鬼っぷりだと、
苦笑混じりに見守っててくれる君に、なって来たのがまた。
微妙に口惜しいのだけれど…嬉しくもあって。


  俺みたいな人間には、
  人を好きになるのって やっぱ大変だ。


シャツ越しでも、触れ合うところはゆるゆると熱い。
その熱に甘やかされ、とろかされ。
明日の朝だけは うんと寒いと良いのにな、なんて。
こうしてたいってのの言い訳になんのにな、なんて思いつつ。
ふたたびのまどろみへ、吸い込まれてゆく冬の晩。






  〜Fine〜  10.01.03.


  *関西大vs鹿島は、
   最後の最後に社会人の粘りが利いたか、
   関大がラストで追いつかれちったのが妙に残念でした。
   関西勢だったから?
   いやいや、心は大学生だったからさvv
   (そのくらいの息子がいるかもしれないくらいに
    おばさん世代のくせにとかどうとか 言 わ な い の・笑)

  *それはともかく。
   寒さが厳しくなると書きたくなるのが、
   ラバヒルの供寝や朝寝のシーンです。
   頼もしい恋人さんは、
   同時にそりゃあ甘やかな美人でもあって。
   だから余計に、こっそりと甘えたい妖一さんであるらしいです。


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